一番損する年収とは?

年収が上がれば上がるほど、税金の負担も重くなっていく。一体いくらの年収になると、一番損をするのだろうか。

会社員の方なら、給料アップの話が持ち上がったとき、本当に手取りが増えるのかどうか不安になったことはないだろうか。中小企業経営者や個人事業主の方なら、売上アップを喜ぶ一方で、税金の支払いに頭を悩ませたことはないだろうか。

実は、一番損する年収というものが存在するのだ。年収アップが、逆に手取り額を減らしてしまう可能性さえあるのだ。

このような税金の落とし穴を避けるためには、どうすればいいのだろうか。年収と税金の関係を理解し、適切な節税対策を打つことが肝心だ。

本記事では、一番損する年収の境界線がいくらなのかを解説する。あわせて、税負担を軽減するための節税方法についても紹介しよう。

中小企業経営者や個人事業主の方、サラリーマンの方も、ぜひ参考にしていただきたい。年収アップの機会を逃さず、かしこく税金と向き合う方法がきっと見つかるはずだ。

目次

一番損する年収はいくら?中小企業や個人事業主が知っておきたい金額

中小企業や個人事業主が一番損する年収の金額について解説します。一番損する年収を知ることで、効果的な税金対策を立てることができるでしょう。

年収400万円以下は税金が低い

年収400万円以下の場合、所得税率は5%~10%程度と比較的低めです。この年収帯では、社会保険料や住民税などを差し引いても、手取り額が年収の8割以上になることが多いでしょう。また、各種控除を活用することで、さらに税金を安くおさえることが可能です。

そのため、年収400万円以下の方は、税金の負担が比較的少ないといえます。ただし、生活費などを考えると、必ずしも楽な暮らしができるとは限りません。税金が安いからといって、収入が少なければ生活は苦しくなってしまいます。

税理士に相談して、自分の年収に合った節税対策を立てることをおすすめします。格安の税理士事務所もあるので、気軽に相談してみるのも良いでしょう。

年収850万円超から税率が大幅アップ

年収が850万円を超えると、税率が大幅に上がります。具体的には、所得税率が45%にまで跳ね上がるのです。この税率は、年収1億円を超える超高額所得者と同じ水準です。

年収850万円を超えると、給与所得控除が一律195万円に据え置かれてしまうため、年収が上がるほど控除額の恩恵を受けにくくなります。さらに住民税も高めの税率が適用されるため、手取り額が想像以上に少なくなってしまうのです。

このような税制の仕組みを理解していないと、年収アップが逆に損をする結果になりかねません。年収850万円を超える方は、税理士に相談して節税対策を検討することが賢明だといえるでしょう。

一番損する年収の境界線

では、具体的にどのあたりの年収が一番損をするのでしょうか。それは、年収1,000万円前後だと考えられます。

年収1,000万円を境に、所得税率は33%から40%に跳ね上がります。たった1万円の年収アップで、税率が7%も上がってしまうのです。この急激な税率アップが、年収1,000万円前後を一番損する年収だと感じさせる要因の一つといえるでしょう。

また、年収1,000万円を超えると、扶養控除や配偶者控除など、様々な所得控除が適用されなくなってしまうのも痛手です。年収が上がったのに、これまで受けられていた控除が使えなくなるのは、損した気分になってしまいますよね。

年収1,000万円前後の方は、所得税と住民税を合わせると、税負担が年収の4割近くにもなります。高い税金を払っているのに、控除が減るのでは割に合わないと感じてしまうのも無理はありません。

年収1億円超の超高額所得者の税率

年収1億円を超える超高額所得者の場合、所得税率は45%とかなり高めです。住民税10%と合わせると、トータルの税率は55%にもなります。

年収の半分以上が税金で持っていかれてしまうのは、正直心痛いですよね。しかし、それだけ収入が多いということは、高い税金を払っても、充分に豊かな生活ができるはずです。

むしろ年収1億円を超える方は、いかに合法的な節税対策を行って税負担を減らすかを考えるべきだといえます。資産運用や不動産投資、私募ファンドへの投資など、節税効果の高い運用を検討してみてはいかがでしょうか。

超高額所得者でも、節税対策をしっかりと行えば、税負担を大幅に減らすことができるはずです。プロの税理士に相談して、自分に合った節税対策を探ってみるのも良いかもしれません。

一番得する年収

これまで一番損する年収について解説してきましたが、逆に一番得する年収はいくらくらいなのでしょうか。

一番得する年収は、600万円〜700万円程度だと考えられます。この年収帯では、所得税率が20%前後とそれほど高くありません。住民税を合わせても、税負担は年収の3割以下に収まるでしょう。

年収600万円〜700万円程度なら、生活に必要なお金を確保しつつ、ある程度自由に使えるお金も残るはずです。各種控除を利用すれば、さらに税負担を減らすことができるでしょう。

また、年収600万円を下回ると、社会保険料の負担も軽減される場合があります。年収600万円以下の方は、社会保険料控除が大きくなることで、手取り額が増える可能性があります。

年収600万円〜700万円程度の方は、税金の負担が比較的軽いことと、社会保険料の恩恵を受けられることから、一番得する年収だといえるのではないでしょうか。

中小企業経営者や個人事業主が一番損する年収になるメカニズム

中小企業経営者や個人事業主が一番損する年収になってしまうメカニズムについて解説します。一番損する年収の仕組みを理解することで、効果的な節税対策を立てることができるでしょう。

累進課税制度の仕組み

日本では、所得税と住民税に累進課税制度が採用されています。累進課税制度とは、所得が増えるほど税率が高くなる仕組みのことです。

所得税の税率は、課税される所得金額に応じて5%〜45%の7段階に分かれています。年収が上がるほど、段階的に税率も上がっていくのです。例えば、年収500万円なら所得税率は20%ですが、年収1,500万円になると40%にまで跳ね上がります。

住民税も所得に応じて税率が変わる仕組みになっています。住民税の所得割は、前年の所得に対して一律10%の税率がかかります。所得が増えれば増えるほど、住民税の負担も大きくなるということですね。

このように、日本の税制では所得が上がるほど税負担が重くなるようにできています。高所得者ほど社会に対する貢献度が高いと考えられているためです。その一方で、所得が上がっても手取り額があまり増えないのは、この累進課税制度が原因だといえるでしょう。

年収アップによる控除の減少

所得税では、所得控除と呼ばれる各種の控除制度があります。代表的なものとしては、基礎控除や配偶者控除、扶養控除などが挙げられます。

所得控除は、課税対象となる所得から一定の金額を差し引くことで、税負担を軽減する制度です。しかし、年収が上がるとこれらの控除が段階的に減額されたり、適用外になったりします。

例えば基礎控除は、年収2,400万円以下なら一律48万円が控除されます。ところが、年収が2,400万円を超えると控除額が減り始め、2,500万円以上になると基礎控除が適用されなくなるのです。

配偶者控除や扶養控除なども、年収の増加に伴って控除額が少なくなっていきます。所得控除が減れば、その分税負担が増えることになります。年収が上がったのに、思ったより手取りが増えない理由の一つが、この控除の減少にあるのです。

年収アップによって起こる控除の減少は、一番損する年収の境界線をさらに分かりにくくしています。このような仕組みを理解していないと、思わぬ落とし穴にはまってしまう恐れがあります。

年収が上がると手取りが減るケース

先ほど解説した累進課税制度と所得控除の減少によって、年収が上がったのに手取りが減ってしまうケースも起こり得ます。

例えば、年収800万円の会社員が100万円昇給したとします。所得税率は23%から33%に上がり、住民税も増加します。さらに、年収900万円を超えたことで配偶者控除が適用されなくなったとしましょう。

この場合、税金と社会保険料の増加分が昇給分を上回ってしまい、手取りが昇給前よりも減ってしまう可能性があります。せっかく年収が上がったのに、生活が苦しくなるなんて本末転倒ですよね。

中小企業経営者や個人事業主の場合、社会保険料は会社員よりも負担が少ない傾向にあります。その分、所得税の負担が重くのしかかることになります。自分の年収が一番損する年収に近づいていないか、しっかりと確認しておく必要がありそうです。

年収アップが逆効果にならないよう、入念な税金対策を行うことが大切だといえるでしょう。

一番損する年収帯の中小企業経営者・個人事業主におすすめの節税対策

一番損する年収帯の中小企業経営者や個人事業主におすすめの節税対策について解説します。税負担を少しでも軽くするために、ぜひ参考にしてみてください。

経費計上で所得を圧縮

中小企業経営者や個人事業主にとって、経費計上は節税対策の基本中の基本です。経費計上とは、収入を得るために必要な支出を経費として申告することで、課税対象となる所得を減らす方法のことです。

経費として計上できるものは、事業に関連する支出であれば幅広く認められています。例えば、仕入れ原価や人件費、店舗の家賃、広告宣伝費、交通費、通信費などが代表的な経費です。

こうした経費を漏れなく計上することで、課税対象となる所得を大幅に圧縮することができます。その結果、所得税や住民税の負担を軽減できるというわけです。

ただし、経費計上には注意点もあります。事業とは関係のない支出を経費に混ぜたり、架空の経費を計上したりすると、税務調査で指摘されるリスクがあります。経費計上は節税対策の要となる手法ですが、適切に行うことが大切だといえるでしょう。

経費の仕訳方法など、専門的な知識が必要な部分は、格安の税理士事務所に相談するのも一つの手です。

青色申告で控除額アップ

個人事業主の方は、所得税の申告方法を白色申告から青色申告に変更することで、節税効果を高められる可能性があります。

青色申告のメリットの一つが、特別控除を受けられることです。青色申告特別控除として、最大65万円が所得から控除されるのです。条件を満たせば、控除額は10万円アップして最大75万円になります。

この特別控除は、帳簿づけの手間などに対する優遇措置だと考えられています。白色申告に比べて、青色申告の方が帳簿づけなどの事務負担が重くなるためです。

もちろん、きちんと帳簿づけをする必要がありますし、申告書の提出期限なども厳しくなります。しかし、節税効果を得られるのであれば、青色申告を選択する価値は十分にあるでしょう。

青色申告の方法について詳しく知りたい方は、一度税理士に相談してみることをおすすめします。

配偶者や扶養家族の活用

所得税では、配偶者控除や扶養控除といった制度があります。これらの制度を活用することで、所得税の負担を軽減できる可能性があります。

例えば、収入が103万円以下の配偶者を持つ場合、納税者本人の所得から最大38万円を控除できるのです。配偶者の収入が103万円を超えると控除額が段階的に減っていきますが、150万円までなら配偶者控除を受けられます。

また、扶養家族がいる場合は、扶養控除を受けることができます。扶養控除の額は、扶養家族の年齢などによって異なりますが、1人につき最大63万円の控除が受けられます。

このように、配偶者や扶養家族の状況をうまく活用することで、所得税の負担を減らすことが可能です。ただし、配偶者や扶養家族の収入が一定以上になると控除が受けられなくなるので注意が必要です。

家族の収入状況を踏まえつつ、控除が最大限受けられるよう工夫してみてはいかがでしょうか。

小規模企業共済等の活用

中小企業経営者や個人事業主の方は、小規模企業共済や中小企業倒産防止共済といった共済制度を活用することで、節税効果を得られる可能性があります。

小規模企業共済は、掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税の負担を減らすことができます。掛金は月額1,000円から70,000円の範囲で自由に設定でき、掛金総額は800万円が上限です。

共済金は事業をやめたときや退職したときに受け取ることができます。将来の生活資金を準備しつつ、節税効果も得られる制度だといえるでしょう。

中小企業倒産防止共済も同様に、掛金が全額所得控除の対象となります。掛金は月額5,000円から20万円の範囲で設定でき、共済金の貸付けや無利子・無担保の事業資金の借り入れなどのメリットもあります。

これらの共済制度は、万が一の際の備えにもなりますし、節税効果も期待できます。加入するかどうかは、自身の事業の状況を見極めつつ、検討してみる価値があるでしょう。

不動産投資の節税効果

個人事業主の方は、不動産投資を行うことで節税効果を得られる可能性があります。アパートやマンション、事務所などの不動産を購入し、賃貸に出すことで不動産所得を得るのです。

不動産所得では、収入から必要経費を差し引いた金額に対してのみ課税されるため、多くの経費を計上することで節税になります。必要経費には、固定資産税や都市計画税、修繕費、管理費、減価償却費などが含まれます。

初期投資の費用を借入金で賄えば、支払利息も経費に計上できます。不動産の取得価格にもよりますが、減価償却費と借入金の支払利息を多く計上することで、収支がマイナスになるケースも考えられます。その場合は、不動産所得による所得税の納税額が0円になる可能性もあります。

ただし、不動産投資はリスクも大きい投資方法です。当初の計画通りに賃貸収入が得られない可能性や、入居者とのトラブルに巻き込まれるリスクなどもあります。

節税効果を狙うのであれば、十分な準備と知識を持って臨む必要があるでしょう。不動産投資について詳しく知りたい方は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

ライフステージ別でみる一番損する年収の境界線

一番損する年収の境界線は、ライフステージによっても変化します。ここでは、ライフステージ別に一番損する年収の目安を解説していきます。

独身の場合

独身の場合、一番損する年収の境界線は比較的シンプルです。年収が1,000万円前後になると、所得税率が33%から40%に跳ね上がるため、この辺りが目安だといえるでしょう。

ただし、独身の場合は各種控除が利用しづらいというデメリットもあります。配偶者控除や扶養控除が使えないため、所得控除の恩恵をフルに受けることができないのです。住宅ローン控除を受けられる持ち家があれば話は別ですが、賃貸暮らしの独身者にはその恩恵もありません。

そのため、独身の方は税金対策に注力する必要性が高いといえます。保険料控除やふるさと納税など、利用できる控除は積極的に活用していきたいですね。将来的な資産形成のために、iDeCoやNISAといった非課税の制度にも目を向けてみるのがおすすめです。

配偶者控除を受けられる場合

配偶者控除が受けられる共働き世帯の場合、103万円以下の収入に抑えた方が節税になるケースが多いです。配偶者の年収が103万円以下であれば、最大38万円の配偶者控除を受けられます。

103万円を超えると控除額が段階的に減っていき、141万円を超えると配偶者控除が適用されなくなってしまうのです。そのため、配偶者の収入を130万円程度に抑えておくのが得策だといえるでしょう。

配偶者の収入が150万円以下なら、配偶者特別控除を利用することもできます。ただし、この控除は段階的に設定されているため、配偶者の収入によっては思ったほど節税効果が得られない可能性もあります。

共働き世帯の場合は、夫婦の収入バランスを考えつつ、控除が最大限受けられるような調整が大切です。税制改正の動向にも注意しつつ、有効な節税対策を探っていきたいですね。

子育て中の扶養控除

子育て中の場合は、扶養控除の活用がカギとなります。扶養家族1人につき最大63万円の所得控除が受けられるため、子供が多いほど節税効果は高くなる傾向にあります。

ただし、扶養家族の年齢によって控除額は異なります。例えば、16歳以上19歳未満の子供は特定扶養親族として、最大38万円の控除が適用されます。19歳以上23歳未満の特別障害者に該当する子供なら、最大75万円の控除を受けられます。

子育て中の世帯は、教育費などの出費も多くなる時期です。扶養控除をフルに活用しつつ、ほかにも使える制度がないか確認してみるのが賢明でしょう。子供の人数や年齢、障害の有無などを考慮しつつ、有効な節税対策を考えていく必要がありそうです。

教育費等の支出が多い時期

子供の教育費の支出が多い時期は、節税対策にも頭を悩ませるものです。学費の負担が重くのしかかる一方で、所得税率が上がれば思わぬ出費になってしまうからです。

教育費の支出が多い世帯は、所得税の教育資金の一括贈与に関する非課税制度の利用を検討してみるのもおすすめです。祖父母などから教育資金の一括贈与を受けられるなら、最大1,500万円までは贈与税が非課税になります。

ただし、贈与を受けられるのは子供が30歳になるまでですし、学費以外に使途が制限されています。教育費の支出は計画的に行う必要があるため、早めに制度の詳細を確認しておくことが大切です。

そのほか、奨学金の利用や教育ローンの活用なども視野に入れてみましょう。家計の状況を見極めつつ、教育費負担を軽減する方法を模索していくことが求められます。

一番損する年収を回避して効率的に稼ぐコツ

一番損する年収を回避して、効率的に稼ぐためのコツを解説します。収入アップを目指す方も、節税対策に悩む方も、ぜひ参考にしてみてください。

法人成りの節税メリット

個人事業主の方は、法人成りすることで大きな節税メリットを得られる可能性があります。法人は個人とは別の納税主体となるため、個人の所得税とは別に法人税が課税されるのです。

個人の所得税率は最高45%ですが、法人税率は23.2%まで下がっているため、法人成りすることで節税効果が期待できます。個人の所得が高い場合ほど、法人成りのメリットは大きくなる傾向にあります。

ただし、法人成りにはデメリットもあります。設立や運営にかかる手間やコストが増える点は見過ごせません。会計処理も複雑になるため、税理士に依頼する必要が出てくるかもしれません。

法人成りすべきかどうかは、事業の規模や将来性、個人の所得水準などを総合的に判断する必要があります。メリットとデメリットをよく吟味した上で、慎重に検討していくことが大切です。

収入分散による累進課税対策

収入を分散させることで、累進課税による税負担を軽減することができます。この方法は、主に事業を営む個人事業主に有効だといえるでしょう。

具体的には、事業の一部を分社化して家族に経営を任せたり、配偶者や子供に給与を支払ったりする方法が考えられます。家族で収入を分散することで、所得税の累進税率が適用される所得を減らすことができるわけです。

例えば、夫婦で800万円の所得があるなら、400万円ずつに分けた方が所得税の負担が少なくなります。単純計算すれば、所得税負担を半分程度に抑えられることになるでしょう。

ただし、所得の分散には注意点もあります。家族に支払う給与は適正な金額である必要があるほか、必要書類の作成や記帳なども求められます。税務調査で指摘を受けないよう、ルールに則って適切に行うことが大切です。

所得の分散は税理士に相談しながら進めることをおすすめします。節税効果を最大限に高められるよう、プロのアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。

企業型確定拠出年金の活用

サラリーマンの方は、企業型確定拠出年金(企業型DC)の活用で節税効果を得られる可能性があります。企業型DCとは、勤務先の企業が従業員のために運用する年金制度のことです。

企業型DCでは、掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を減らすことができます。掛金の金額は企業によって異なりますが、最大で月額5.5万円まで非課税となります。

運用益も非課税なので、長期的に資産を築いていくことができるでしょう。老後の生活資金を準備しつつ、節税メリットも享受できる制度だといえます。

ただし、企業型DCを導入しているかどうかは企業次第です。自分の勤務先に企業型DCがない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)の活用を検討するのも一つの手でしょう。

企業型DCやiDeCoについて詳しく知りたい方は、社内の担当者や金融機関に問い合わせてみることをおすすめします。自身のライフプランに合わせた年金選びを心がけましょう。

ストックオプション等の効果的活用

経営者や役員の方は、ストックオプションを効果的に活用することで節税につなげることができます。ストックオプションとは、あらかじめ定められた価格で自社株を購入できる権利のことです。

ストックオプションで得た利益は、権利行使から2年超の株式保有を条件として税率26.25%の分離課税となるため、所得税に比べると税負担が軽減されます。高い所得税率の適用を避けつつ、報酬を得ることができるわけです。

同様の効果は、限定株式やパフォーマンスシェアなどのインセンティブ報酬制度でも得られます。各制度の特徴をよく理解した上で、自社の状況に合った報酬設計を行うことが大切だといえるでしょう。

ただし、ストックオプションなどの株式報酬は会計処理が非常に複雑です。制度の選択を誤れば、思わぬ税務リスクを招く恐れもあります。

株式報酬制度の導入は、税理士や社会保険労務士などの専門家に相談しながら慎重に進めることが求められます。節税メリットを追求しつつも、適切な制度設計を心がけたいものです。

中小企業や個人事業主が知っておきたい一番損する年収の落とし穴

中小企業経営者や個人事業主の方は、一番損する年収の落とし穴についても知っておく必要があります。ここでは、陥りやすい落とし穴とその対策について解説します。

年収アップの誘惑に惑わされない

事業が順調なときは、つい年収アップを目指したくなるものです。しかし、年収が上がることで税負担が重くなれば、本末転倒といえるでしょう。

年収アップにより、税負担増の影響が手取りの増加分を上回ってしまうこともあるのです。税率の壁を超えるギリギリの年収なら、むしろ損をする可能性だって否定できません。

年収アップを目指すのであれば、税率の境目を意識することが大切です。税率が大きく変わるポイントを把握した上で、効果的な節税対策を立てながら臨みたいですね。

目先の年収アップに惑わされることなく、トータルでの手取りアップを目指していくことが賢明だといえるでしょう。

税理士等に相談して総合的に判断

一番損する年収の境界線は、世帯の状況によっても変わってきます。自分の状況で一番損する年収がいくらなのか、専門家に相談して総合的に判断するのがおすすめです。

税理士などの専門家であれば、年収と税金の関係を一目で把握できるはずです。世帯構成や各種控除の適用状況などを踏まえつつ、もっともふさわしい年収水準を提案してくれるでしょう。

節税対策の立て方についてもアドバイスを受けられるはずです。漠然と税金対策に取り組むのではなく、自分の状況に合った最適な方法を探ってもらうのが賢明だといえます。

格安の税理士事務所なら、比較的安価な報酬で相談に乗ってもらえます。税に詳しくない方は、ぜひ専門家の知恵を借りてみてはいかがでしょうか。

一時的な収入増加に注意

臨時的な収入があった場合は、通常より高い税率で税金を払う必要が出てくることがあります。いわゆる「ボーナス課税」と呼ばれるものですね。

例えば、不動産の売却益や株式の譲渡益などが発生した場合、所得税と住民税の税率が跳ね上がることがあります。通常の所得税率に比べて、10%以上も高い税率が適用されるのです。

このような一時的な収入増加には注意が必要です。税率の高い所得区分にかかってしまわないよう、収入が発生するタイミングを調整するのも一つの手でしょう。

一時所得の計算方法は非常に複雑なので、税理士に相談して適切に対処することが大切です。思わぬ税務リスクを避けるためにも、プロの力を借りることをおすすめします。

事業承継時の税務リスクにも備えを

中小企業経営者の方は、事業承継時の税務リスクについても頭に入れておく必要があります。事業承継とは、経営者の交代に伴い事業を引き継ぐことを指します。

事業用資産の贈与や相続が発生する場合、思わぬ税負担が生じるリスクがあるのです。株式の評価方法によっては、多額の贈与税や相続税の支払いを求められることも考えられます。

リスクを少しでも減らすためには、計画的に事業承継を進めていくことが欠かせません。自社株の贈与は計画的に行ったり、事業用資産と非事業用資産を分けて管理したりするなど、対策を打っておくことが大切です。

事業承継は専門的で複雑な分野なので、税理士だけでなく中小企業診断士などの専門家にも相談するのがおすすめです。事前に綿密な計画を立てて、円滑な事業承継を目指しましょう。

納税は国民の義務ですから、適切に税金を納めることは大前提です。ただ、中小企業経営者や個人事業主の方は、様々な節税対策を駆使して、賢く税金と向き合っていく必要があります。

本記事で解説した内容を参考に、一番損する年収の境界線を意識しつつ、自身の状況に合った節税対策を見つけていきましょう。税務の専門家に相談するのも大いに結構です。

適切な節税対策を実行に移すことで、手取りを少しでも増やせるはずです。事業の成長にもつながることでしょう。一番損する年収の落とし穴に気を付けながら、利益を着実に積み上げていってください。

一番損する年収対策のまとめ

一番損する年収の境界線は、課税所得によって異なります。年収が高くなるほど、税率も上がっていくのです。年収アップが逆に損をする可能性もあるため、注意が必要でしょう。

中小企業経営者や個人事業主の方は、様々な節税対策を駆使することが大切です。経費計上を徹底したり、控除制度を有効活用したりするなど、手を尽くしましょう。事業の形態によっては、法人成りによる節税効果も期待できます。

ライフステージによって一番得する年収は変わってきます。配偶者控除の適用や扶養家族の有無などで、節税の余地が変わってくるためです。自分の状況を見極めつつ、メリットを最大化する工夫が欠かせません。

一番損する年収の落とし穴にも気を付けたいものです。目先の年収アップに惑わされず、トータルでの手取りを意識することが肝心でしょう。状況が複雑なら、税理士などの専門家に相談するのもおすすめです。

一番損する年収の目安 課税所得4,000万円以上
年収850万円超
一番得する年収の目安 年収600万円程度
中小企業経営者・個人事業主の節税対策 ・経費計上の徹底
・青色申告の活用
・配偶者や扶養家族の活用
・共済制度の利用
・不動産投資の活用
ライフステージ別の留意点 ・独身︓控除が利用しづらい
・配偶者控除︓103万円以下に抑える
・子育て中︓扶養控除を活用
・教育費︓一括贈与の非課税制度も
一番損する年収の落とし穴 ・年収アップの誘惑に惑わされない
・専門家に相談して総合的に判断
・一時的な収入増加に注意
・事業承継の税務リスクに備える
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